アーキフォーラム

stmd2009-05-24


ゲストは坂本一成さん。タイトルは「日常の詩学
坂本さんといえば、篠原一男さんから続く東工大の強い流れの中の一人であり、コアな住宅を設計されるというイメージを持っていた。どんな話が聞けるのか、マスクをしっかり準備して向かう。


少し到着が遅く立ち見。
冒頭、いきいきした自由な場所や空間をつくるためには建築をつくるうえでの形式や前提が必要だという。しかし形式となる概念を推し進めるだけでは建築はリアリティを失う。形式とリアリティの葛藤が自由さを生む。という。
形式ということに意識がおかれながら、70年代から順に作品が説明されるその多くは住宅である。「閉じた箱」「イエ型」「自由な構成」「螺旋」「スモールコンパクトユニット」「アイランドプラン」「交差メゾネット」など様々な概念と作品がリンクされながら説明されていた。
普通建築家は嫌うのではないかと思われる形式的な言葉を惜しげもなく使うなと思った。[egota house A] にしてもアイランドプランという言葉を使うかどうかで伝わり方は大きく違うだろう。「形式的に作りながら自由度を高めていく」という氏の言葉に形式を用いることへの積極性を感じた。
さらに「非日常なものは形式的になってしまう」「日常と連続した日常」「形式がなければ建築はできない」とも語る。そうなのか?と経験浅い私は超ベテランの言葉を深く噛み締める。この点についてはつくることを考える上で常に念頭におきたい。
質疑が面白かった。集合住宅におけるコモンスペースの議論。坂本さんはプライベートとパブリックな部分はダイレクトにつながるべきと計画学の階層構成を批判。さらに建築としてのわかりやすさについても議論が広がる。
形式と実際との葛藤という話はよく聞くが、形式を持つという前提について様々な話、考え方を聞くことができて有意義だった。
作りやすさ、説明の容易さのための形式なのか。それならばダイアグラム信仰にもおちいりかねない。しかし、坂本さんは建築を自由にするための前提として形式や概念を語る。