広島

stmd2008-09-20



9/19


建築学会の全国大会の発表のため広島大学へ。
ふがいない論文ではあるが、何とか発表する。
他の人の発表を聞くことは刺激になる。自分の修士論文への希望だけがわく。展望はなし。


午後、学会のシンポジウムも聞かず、市内へ向かう。
この旅で初めて広島に来て、一番行きたかった場所「世界平和記念聖堂」へ。
村野藤吾さんの設計。そういや村野さんの建築はあまり見たことがないな。


基本的にはチャペルの作りだが、基本的に空間はキューブでそこにアーチの開口が空いているような空間の印象。
ただ、屋根伏がめちゃかっこいい。浅はかだがかっこいいと言いたくなる。
空間の大きさに対してアーチの大きさなんかも気持ちいいなと思った。
村野さんならではの奔放さが感じられる部分があったり。知的な光の取り方があったり。
この時代特有!?の無骨さがあったり。感覚にビンビンくる感じだった。
運良く塔に上らせてもらい、得した気分。
上から見下ろす街並を感じると、この建築の歴史性と独自性を感じた。


夕焼けをバックに原爆ドームを見た後。
次も旅の楽しみ、「若手建家のアジェンダ」へ。
広島の若手建築化4人(谷尻誠さん。小川文象さん、土井一秀さん、石川誠さん)と藤村龍至さんによるシンポジウム。
川沿いのカフェでしかも屋外。かなり素敵な状況だった。
まず、五人が考えをプレゼ。
藤村さんは、やっぱり「批判的工学主義」
歴史のなかでの位置づけはよくわかるが、やはりやろうとしていることを60%ぐらいしか理解できていないという印象を受ける。
小川さんのテーマは「break construct 破壊構築」石川さん「楽しい関係」
土井さん「風景をいかに建築に取り込むか」(うろ覚え)谷尻さん「はじめて考えるときのように」
それぞれの考え方を語る。広島の4人は作品紹介だけのようにも思えたが。
谷尻さんの考え方には興味がわく。
「公園を設計することになったら、公園が始まる前や、公園ってなんなのかを考える」共感。
藤村さんは討論に向けて明確なビジョンがあるのだろう。3つのテーマをあげる。
「社会とデザインの関係は?」「その場所に建てることの固有性をどうとらえるか?」「デザイン行為とは何か?」
その後、議論がされ、会場からの質問も募集し、議論が重なる。


藤村さんと広島。その土壌の違いがまず浮き彫りになった印象。
一方は資本主義社会や、カオスティックな街。
もう一方は、比較的緑が多い環境。
違いがでるのは、当たり前だろう。


最近、いつも自分が働くところはどこか?という考えにもっていくきらいがあるが。
広島か東京か。それを考えてみると東京と答えるかも。
広島には個人の素敵なクライアントがいて、健康で自分好み寄りの建築がつくれそうな気がする。
しかし、都市がもつ制約や、都市をつくることを背負ってこその建築の社会性だと思うし、
そこを今の年齢で経験しなかったら、もう二度とない気がしている。
作家性の強いものよりも、資本主義的な建築プロセスをもつところのほうがその色は強い気がする。
でも、一人一人のクライアントと大切に建築をつくるのっていいよなとも思う。


今日は長いな。ユースホステルでゆっくりしよう。



9/20


早朝、平和記念公園へ。
狙い通り。休日の早朝ともなると公園を素敵に使っている人がたくさん。
僕があの近くに住んでいたとしてもそうする。
川と緑の中をそれぞれの人の時間が流れていて、いい。
いい思い出がどんどん作られそうでもあるし、普段使いの自転車姿もよく似合う。


丹下さんの建築は、重い歴史と強い軸を持つ場所に堂々と構えていた。
縦ライン要素の割り付け、打ち放しの仕上げに感動。
丹下さんが日本にいて本当によかった。建築に感動できるということを教えてくれる気がする。


広島市現代美術館」へ
途中、中央大通りをひたすら歩く、初顔合わせのまちを歩くのはいつも楽しい。
ずばりポストモダンという印象。
幅木と壁のエッジに大理石が使われていたり、床もそう。
中心性のあるプランニングは内部空間のためというよりも、
時代の理論が全体の構成に反映した印象をうける。
空間体験ではなく、ああいう建築であることが大切とされたんだろうな。


いい光景にであう。ヘンリー・ムーアの彫刻が置かれている広場で。いい音が。
おじさんが不思議な笛を吹いていた。(名前が全然わからない)
そして、それを聞きながらしゃべるおじさん、散歩の若い女性。
気持ちよかった。


尾道へ向かう。
まちがおもしろいと聞いていた、向かう途中、車窓からの風景がよかった。
山の地形は、やはり新しいものが入るには不利なんだろうか。
古い民家と参道がきれいに息づいていた。
そこから海側へ降りたところにある商店街も、参道方向をうまく空けてつながっている。
さらに海側へ降りると、また違う風景がある。
あの商店街なりの活気を感じた。


尾道市立美術館
ザ・安藤さんという空間のボキャブラリー。
動線をエントランスまでに一度回す。幾何学的に振る。
古い建物と、自然の取り込み方が気持ちいい。
展示の部屋から出ると、自然に緑が目に入る構成。
絶好のビューも屋内に取り込む潔さは六甲山のコンペの参考になりそう。


学会に少ししか行かずに、旅を楽しんだ広島だった。